3つ星物語
私も思わず立ち上がる。
 
口におにぎりをくわえたまま、教室から逃げようとした。
 
廊下でマナミに両腕を掴まれた時は、もうすでにおにぎりは食道の中。

「玖生! あんたって奴は――……あ、あれ?」
 
マナミに両手首を掴まれてお手上げ状態だった。
 
だけど、おにぎりはもう私のものになったもんね、べーっと私がこころのなかで舌を出していると、マナミが廊下の窓の下を見て、その大きい目を見張った。

「あ、あれ、南生ちゃんじゃない?」
 
南生? 私もつられて窓の外を見る。
 
校舎裏の陰になっているそこには、確かに私と同じ顔をした女子高生がいた。
 
別の女の子2人を相手に、何やらもめている様子だ。
 
なんだ、なんだ?

「違う。あれ、南生じゃなくて紗生だよ」

「何かヤバそうな雰囲気……泣いてんじゃん、相手のひとり」
 
私はさっと身を翻すと“ちょっと行ってくる”とマナミにそう残し、だだだっと廊下を駆け抜けて行った。
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