3つ星物語
「だけど、玖生って男の子みたいでしょう? 恋愛の対象に、なるの?」
 
大地は真っ直ぐに私を見て言った。

「女の子ですよ、あいつは」
 
大地は私を射るように見据える。

「俺はそんな玖生が好きなんですよ」
 
大地の言葉に、ちりちりと胸が焼ける。

「……なんて、本人には言わないでくださいね」
 
はにかんで大地はまた頭を掻いた。
 
手を、伸ばしたくなった。
 
今、私のこの手は、伊津くんではなく、大地を求めている。

「じゃあ、お邪魔なんで。機会があったら、また」
 
大地はぺこりと一礼して、私たちに背を向けて去って行った。
 
私は反射的にぱっと伊津くんの手を払い、駆け出した。

「ごめん! 直哉くん!」
 
そう叫んで雑踏に紛れた大地の背中を捜そうとした。

「いいよ、玖生ちゃん!」
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