短編集『秋が降る』
「あの、飯野ハルです」

スカイは手元の資料のようなものを確認すると、ひとりで軽くうなずいてから、
「口」
と言った。

まるで死刑の宣告のように聞こえ、私の口は開くことを拒否している。

カナさんが足で私をつつく。

そうだ・・・。

目立ってはだめだ。

私は目をしっかりとつぶったまま、口を大きく開いた。

錠剤はひとつ。
それを水で流しこむと、今度は自ら口を開いて見せた。

スカイはまた軽くうなずくと、次の人に同じ宣告をして回った。

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