私の師匠は沖田総司です【下】

しばらくキスの幸せに浸っていると、どこからか私の名前を呼ぶ声がした。

龍馬さんにも聞こえたらしく、私の背後にある屯所に視線を向けている。

「そろそろ行ったほうがいいな」

「……はい」

龍馬さんの大きな手で顔を挟まれると、軽く唇を合わせて離れる。

「師匠さんを成仏させてやれよ。でも、身体のこともあるし、あまり無茶はするなよ」

「はい……」

「好きだよ、蒼蝶。誰よりも」

「私も……龍馬さんが好きです」

でも、貴方を選べない。

こんな私の身勝手な告白は、ある意味残酷なのかもしれない。

でも、龍馬さんは笑って

「ありがとう」

と、言ってくれた。

「じゃあな」

龍馬さんは私の頭を撫でると、背を向けて歩き始める。

私は龍馬さんが見えなるまで、その後ろ姿を見送り続けた。
< 199 / 267 >

この作品をシェア

pagetop