私の師匠は沖田総司です【下】
新選組を壊すのも守るのも私次第。

「お願い、します……。何でも言うこと聞きますから、新選組の皆さんには手を出さないでください……」

新選組には組長がいる。大切な人が沢山いる。

山南さんが襲撃されただけでも胸が張り裂けそうなのに、全員に被害が起きたら絶対に耐えられない。

「お願いします……。お願いします……」

「だったら蒼蝶さん、今からウチが言うことを守ってや。誰に何を聞かれても黙ること、そしてウチに逆らわんことや。この二つを守れば、アンタや大切なお仲間が守れるで」

「……はい」

「ふふふ、ええ子やね。じゃあ、これからどこまでアンタが守りきれるかお手並み拝見や」

艶子さんは私から手を離すと、後の朝食の準備を私に全部任せ勝手場を出ていった。

冷たくなった頬に、様々な感情が入り混じった涙が一筋流れた。

これから私は、彼女の言いなりになる。

それが新選組や組長を守る一番の方法。

その事実に、とてつもない重圧を感じた。

でも、大丈夫。私なら耐えられる。

「けほっ、けほっ」

小さな咳をした後、料理を始める。

大丈夫、大丈夫。私なら大丈夫だ。

そう頭で反復しながら孤独に朝食の準備を始めた。
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