私の師匠は沖田総司です【下】
大雨のせいで水はけの悪い道が浅瀬のようになっている。

先も見通せない程の雨の中を歩いていると、やはり蒼蝶は来ないのではないかと思ってしまう。

でも、その気持ちと同じぐらいに絶対に来るという気持ちもあった。

……とにかく、行くしかないな。

寒さから身を守るように、蒼蝶から貰った襟巻に顔を半分ほど埋め歩き続ける。

すると轟々と荒々しい音が聞こえてきた。

一直線に並んでいた家々が途切れると、増水して茶色く濁った川が姿を現す。

いつもは穏やかに流れている川が今日は怒り狂っているように見えた。

土手の上から荒れた川を見下ろすように歩いていると、目の端に何かが映った。

顔を正面に向け、目を凝らすが、雨が簾のように視界を遮るせいでよく分からない。
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