夫婦ですが何か?Ⅱ
ーーーー10年前ーーーー
覚えたてでも、すでに身につけた仕事をこなして、与えられた秘書課のデスクでパソコンの画面を見つめてキーボードを響かせる。
新人も新人。
入社して半年ほどか。
運とは言わない、実力で天下の大道寺グループの秘書課に就職して。
能力を認められこのご時世に受け入れられたのだから、自分もそれに奉仕するのが筋。
そんな意思で半年、どこか浮ついた先輩方の指導と嫌味の中真面目に仕事に取り組んで能力を上げて。
でも、お姉さま方からしたら、懐きもしない、噂話にも参加しない、付き合いのない地味で仕事馬鹿な私はもっぱら前者の対象だ。
まぁ、
仕事に支障があるわけでもなし、いくらでもある事ない事話せばいいけど。
そうは言いつつ、不意に動かした視線に人の姿を捉えられないこの部署の現状はどうだろうか?
まぁ、それでも補足すれば全員がサボっているようなわけじゃなく、重役につき添って外出している者もいるのだ。
そういう人間はいい。
仕事だし。
それでも、この秘書課には日中に、新人の私だけなんて馬鹿げた現状になるほど人手不足じゃないというのに。
チラリと時計を確認し、彼女らがプチ女子会に入って長いと理解し溜め息をついて首を横に振る。
「よくもまぁ・・・毎日毎日話す事があるものだわ」
誰もいないのをいい事に、ポツリと本心を零すと仕事の再開。
タカタカとキーボードを叩き込んで、視力の悪い目を酷使して励んで。
戻らぬお姉さま方に呆れるのも忘れた頃に、ようやく外の賑やかさに意識が走った。
これぞ・・・黄色い歓声?
普段よりトーンの高い声で様々な女子社員の声が響いて、即座に『煩い』と心で詰ると仕事に戻る。
社長が降りてきているんだろうか?
あの人も、その姿を見せた瞬間に女子社員が馬鹿みたいに沸くから。
外面だけを言えば確かに容姿端麗、しかも頭脳明晰。
愛想も程々によく、女子が惚れる要素はたっぷりなんだろう。
でも、私から見れば・・・、
笑っちゃうくらい作られた【社長】像だと感じる。
それに・・・好みじゃないしな。
だからこそ今もその対象に興味もなく、自分も出向こうとは思わず仕事の継続。