私の愛した未来

嫉妬



お店を出るとき、未来に腕を掴まれたけど
私はその手を振り払って
逃げてきてしまった。



ここがどこなのか分からないけど
とにかく未来の前にはいれない。


もともと未来の仕事場には行くつもりなんてない。
仕事の邪魔をしちゃったら悪いし。

でも。


あんなにもはっきり「来るな」なんて言われると思ってなかった。


しかもよりによって「春子は」なんて言うんだもん。
まるで私だけは行っちゃいけないみたいじゃない。


悲しみと怒りとどうにもならない感情に押しつぶされそうになる。


こーなったら絶対行かないもん。
邪魔になるなら、絶対に行かない。



握りしめた携帯が震える。

ディスプレイには『未来』の文字。


私は携帯をカバンの中に放り込んだ。



…ホテルに戻ろう。

歩いてここまで来たんだから、ホテルまでそんなに遠くないはず。

そう思って歩き出す。



海沿いの道を進む。


行きにこんな道通ったっけ?

…まぁ、いっか。


よく分からないけど進むしかない。

今来た道を戻れば未来に会ってしまう。

なんとしてでも未来より先にホテルに戻らなくちゃ。



ふと、横を見ると ビーチには仲が良さそうなカップルが寄り添っている。


制服を着ているからきっと高校生だろうな…。


優しそうな彼氏と可愛らしい彼女。
どこから見てもお似合いな2人。


いいなぁ…
ここは沖縄。

ここに来てまでケンカなんてしたくなかった。
だけど…。


これはケンカなんかじゃないのかもしれない。
一方的に私が我慢出来なかっただけ、そう考えればケンカなんてものじゃない。

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