私の愛した未来


残された春子は
俺の機嫌を伺うように顔を覗き込む。


「未来…本当に怒ってない?」


「怒ってないけど…?」


「眉間にシワよってますけど…。」


それは、怒ってたんじゃなくて
林を睨んでただけなんだけどな。


「怒ってないっつーの。」

そう言ってコツンと春子のおでこを突く。

いたっ、とか言いながらも春子は可愛い笑顔を見せる。


あーもう。
なんでこんなにも無防備かな。

だから狙われるんだよ!


…まぁ、まだ林が春子を好きな確信はないけど…。


何となく分かる。


あいつは春子のことを狙ってる。



そして俺は
そのことが最高に気に入らない。


春子を1番に想ってんのは俺しかいない。


だからこそ
周りの人が春子のことを気にいる気持ちもよく分かる。

でも、こいつだけは…。


春子だけは譲れない。



林…

頼むから春子のことを諦めてくれ。



そう春子を見つめて祈る俺だって
未だ気持ちを伝えられてないただの幼なじみだ…。


「な、なに?私の顔に何かついてる??」


「…いや…。……授業始まるぞ。春子の大好きな数学。」


「げ……好きじゃないよ!」


そう言って席に戻る春子を見つめて
俺はひとつため息をついた。


< 85 / 114 >

この作品をシェア

pagetop