ケンカときどきチョコレート





 ◆ ◆ ◆ 



「あの時のはな、むちゃくちゃすごかった。だから、…まあ、そんな感じ」



顔を真っ赤にしながら強引に話をまとめた洸太が、あたしの反応をちらちらとうかがっている。



思わず口からこぼれた疑問にちゃんと答えてくれたことと、六年も前のことを洸太がこうやって覚えていてくれたことがうれしい。あの年のバレンタインデーは、あたしの人生のなかでかなり勇気を出した場面だ。まさか、そんなことがきっかけとは、かっこいいだなんて思われていたとは、夢にも思わなかったけれど。だから。



「話してくれてありがとう。すっごくうれしい」



ニヤけた変な顔にならないように気をつけて言うと、洸太もちょっと笑ってくれた。見慣れたはずの笑顔に心臓がはねるのは、ついさっき人生はじめての告白をされたばかりの相手だから。きっとそう、だけど。



「返事は、その、……ホワイトデー、まで、待っていただけないでしょうか……」


「っ!そ、それでよろしいです…」




緊張と照れで変な敬語になったあたしもあたしだけど、ぱっと目を見開いて同じように変な敬語で返事をする洸太も洸太だ。腐れ縁同士、ちょっと似ているのかもしれない。


じゃあ、とかまあ、とかぶつぶつ言って、なんとなく目をあわせてまた二人で笑って、並んでリビングに戻る。



「もう一レースしようぜ」


「次はあたしに勝たせてよね」


「やだね。手を抜くのはおれのポリシーに反する」


「あんたのポリシーはどうでもいいの!」






約束は一ヶ月後。


だけど、まだ緊張したままそわそわと廊下を歩く洸太の背中が、いままでよりかっこよく見えてしまうから。これまで気にもとめなかった笑ったときの目の優しさに、気がついてしまったから。



あたしの返事は、洸太と一緒にいた十年間のあいだに、もう決まってしまっている、かもしれない。



















「ああー!インターホン!忘れてた!大切な用事だったらどうしよう…!」


「ははっ!やっぱりはなは馬鹿だなあ」


「ほとんどあんたのせいでしょー!!」







たぶん。









『ケンカときどきチョコレート』 Fin.




< 15 / 15 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:11

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

泣かないデネブと嘘つきの夢

総文字数/3,488

恋愛(その他)8ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
終わらない嘘は、きみのため 素敵なレビューをありがとうございます。 夢雨さま 2020.05.02
世界でいちばんやさしい夜

総文字数/1,893

恋愛(純愛)4ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
嵐のなかで輝くふたつの満月が ぼくを照らしてくれていた 2020.05.11
花束はいらない

総文字数/2,927

恋愛(その他)6ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
この恋の結末を、わたしは知っていた。 2019.11.10

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop