魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 乾いた土の地面に片膝をついているのは、紛れもなく勇飛くん。私が片想いをしている学級委員の柊勇飛くん。

「でも、なんでそんな格好をしてるの?」

 中世ヨーロッパの騎士のような、ロールプレイングゲームでよく見るような、くすんだ銀色の鎧を身につけている。どこかで見たような、と思ったとき、頬にピタリと彼の右手が当てられた。

「混乱ガスがまだ抜けないのか?」

 切羽詰まった表情で彼が右手を振り上げたので、私はあわてて座ったまま後退った。

「や、ビンタはもういいですから! ここがどこなのか説明して!」

 不安のあまりきょろきょろと辺りを見回す。私たちの数歩先にいるのは、日焼けした顔で髪がぼさぼさに絡まった人相の悪そうな男たち。革製の鎧のようなものを着て、刀身の広い大刀を手にしている。まるで、物語に出てくる山賊のような出で立ちだ。

 その中の一人、髭が伸び放題に伸びた大男がニヤリと笑った。

「ほう、混乱ガスを食らったのにそんなに早く回復するとは、さすがはコランダム村の魔法使いだな。だが、ここから先、おまえたちを通すわけにはいかねえ」
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