魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 とたんに勇飛くんが目を見開き、山賊たちがどっと笑い声を上げる。

「こりゃいい! 聞いて呆れるぜ! 呪文を知らない魔法使いか! 最近魔法使いが何人も死んでるって聞いたが、よっぽど人材不足らしいな」

 バカにされてる……。

 私が下唇を噛んだとき、勇飛くんが必死の表情で言った。

「本当に何も魔法が使えないのか?」
「……たぶん」
「たぶん? この状況だぞ! 何か考えろ!」
「ごめん、たぶんじゃなくてまったく使えない」

 勇飛くんが顔色を失った。

「ごめんね」

 心底申し訳ない気持ちになって、もう一度謝ろうとしたとき、ふと気づく。

「だって、ゲームなんだから、死んじゃっても最初からまたやり直せばいいじゃない」

 私が引きつった笑いを浮かべながら言うと、彼が左腕を私の目の前に突き出した。

「これが本当にゲームだと思うか?」
「え?」

 彼が私の目の前に腕を持ち上げる。よく見ると、ちょうど鎧に覆われていない肘の部分で服が裂け、赤く生々しい切り傷が見える。

「何これ」
「本当にゲームなら、こんなに痛んだりはしない」
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