魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 何度も肩を揺すられ、私はぼんやりと目を開けた。

「大丈夫か?」

 私の顔を勇飛くんが心配そうに覗き込んでいる。彼の黒い前髪を伝った滴が、私の頬にポタポタと落ちた。

「さすが、水も滴るいい男……」

 つぶやいたとき、勇飛くんがわずかに眉を上げた。

「何言ってるんだ?」

 熊田先生にお餅の話をして怒られたときのように、私が間抜けなことをしたとき、彼はこんなふうに少しだけ眉を上げる。呆れてるけど、あからさまにその様子を見せないようにしている感じ。

 いつもの彼の表情にホッとしたとき、勇飛くんが立ち上がって辺りを見回した。やっぱり彼はくすんだ銀色の鎧を身につけている。

「ってことは、ここはやっぱりゲームの中の世界なんだ……」

 信じられないけど、そうとしか考えられない。

 私は上体を起こして辺りを見渡した。すぐそばには流れの急な大河があり、私が座っているのは川岸の砂の上。どうやら勇飛くんが私を助け上げてくれたみたい。
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