魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「ありがとう、助かります」

 勇飛くんがホッとしたように言って、私に先に乗るよう促したので、私は馬車のステップに足をかけた。その瞬間、空気を切るようなヒュッという音がして、御者が鞭で私の足元の地面を叩いた。びっくりしてステップから足を下ろすと、御者が私を睨みつけて言う。

「わしが乗せると言ったのは剣士様だけじゃ。汚(けが)れた血の魔法使いなど乗せん」
「汚れた血……?」

 何のことかよくわからない。私が戸惑って勇飛くんを見上げると、彼は険しい表情になった。

「彼女を乗せないとおっしゃるなら、俺も乗りません」

 きっぱりと言ってスタスタと歩き出した。

「柊くん」

 私はあわてて後を追った。御者から離れると、勇飛くんが歩調を緩めて私と並んだ。

「このゲームの中では、魔法使いは悪魔と闇の契約を結んだ忌むべき存在として蔑(さげす)まれているんだ」
「えー、何それ、ひどい! だって、病気になったり怪我をしたりしたら魔法で治してあげるんだから、本当なら崇(あが)められてもいいくらいじゃないの?」

 私が不満そうに言うと、彼が複雑そうな表情になる。
< 27 / 234 >

この作品をシェア

pagetop