in theクローゼット

「篠塚さん……?」


 青山が目を丸くして、篠塚の机を見る。

 よろよろと立ち上がり、篠塚の机歩み寄った。


「なんで、こんな……」


 落書きだらけの篠塚の机に触れて、青山が呆然とする。


「何で話したんだ! 何でバラしたんだ! 篠塚は、オマエを信用して話したんだろ!?」


 青山が話したのでないなら、否定して欲しかった。

 青山がこんな風に、他人の秘密をベラベラ喋るようなやつじゃないと思いたかった。


「だって、こんなことになるなんて……」


 だから、その言葉が余計に悲しかった。


「なんでだよ、思わなかったって言うのかよ。なんでだよ、なんだよそれ……何でわかんねぇんだよ。だって、オマエら……」


 涙が、溢れそうになる。

 自分が怒ってんのか、悲しんでんのか、なんなのかグチャグチャしてわからない。


「おまえらホモかよってからかって、笑って、病院行けよとか言うくせに」


 他愛もない冗談。


「異性を好きになるのが当然だって、同性好きになるのなんか信じられないとか、異常だって思ってるくせに」


 篠塚の涙が脳裏によぎる。


「オマエら、無自覚かよ!」


 憤り、悔しかった。


「悪気がなかったって言やあ、許されるとでも思ってんのか!」


 善意の悪意が、この身を引き裂く。
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