コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


 神様お願い。

 どうか佐伯が嫌がったりしませんように。

 もう十分俺は、死にそうなんだから。

 風の冷たさなんて全く感じなくなって、全身が心臓になったみたいに震えていた。

 返事がないけれど嫌がっている雰囲気はない。そう思ってちらりと彼女を見ると、そこには真っ赤な顔をして目を伏せる姿があった。

 ・・・わお、めちゃ可愛い。それに、嫌がってるようには見えない、よな。

 と、いうことは――――――――


 喜びよりも緊張が大きかった。

 俺は熱すぎる顔を風にさらし、息を止めて、そおっと佐伯に近づいた。





 やたらと空が青い。


 その後もずっと、俺はその日その時の、空の色ばっかりを覚えているんだろうと思う。





「コントラスト」終わり。

< 105 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop