コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


 同じクラブ員のメンバーにからかわれながらも俺はついその場に立って彼女と向かい合わせ。佐伯はぐっと睨みつけるような鋭い目を一瞬してから、目をそらして言った。

 ―――――――――美術部で出した絵が秋の作品展で選考漏れして参加賞だったの。今、すごく悔しいから雨に濡れるくらい何でもないの。

 それから、呟くように続けたんだ。

 ―――――――――横内君が言うの、判った気分。負けるのって―――――――あたしも、好きじゃない。

 そのまま踵を返して走るように行ってしまった。駅に向かって。俺はしばらくその場から動けなくて、その内一周も皆に置いてかれたことに気がついて、外周のランニングの列へと戻ったのだった。

 心臓がドキドキしていた。

 負けた、って言ったよな、佐伯。美術で負けるってちょっと意味が判らないんだけど・・・まあつまり、自分は選ばれなかったって言いたいんだよな?って。

 俺は何ていってあげればよかったんだろう・・・。

 話しかけようって決意して、最初のタイミングがそれだったのだ。

 凹むでしょ、こんなの難しいぜいきなりは。

 その時は本当に、帰りの電車でも家に帰ってもひきずってしまったのだった。しかも、彼女は翌日学校を休んだのだ。俺は慰めの言葉をかけようって何度もイメトレしていっていたから、それにも凹んだ。

 いねーじゃん、本人が・・・。そう思って。くそ、頑張ったのに、って。

 だけど次こそは!!そう思ってまた、ベッドの上で拳を握り締める。

 必ずハッピーな会話を佐伯としてみせるんだ!


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