コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


「あそこ。女子二人で寝転んでるよ。まあ今日はいい天気だし、寒くないしな~」

 自分がいる外周コートの下側、一本細いあぜ道を挟んで芝生のように整備された斜面がある。その更に下は、もう土がむき出しのグランドだ。

 グランドでは野球部とサッカー部がアチコチでクラブ活動中で、それぞれについている追っかけの女子軍団が今日も黄色い声をあげているのが見えた。

 ・・・本当だ、寝ころんでる。

 スケッチか何かの途中らしい。スケッチブックと筆箱を頭の横に転がして、佐伯ともう一人の女の子が制服姿のままで草の斜面に寝転んでいた。多分美術部の活動なんだろうなと思う。

 斜面の上にグランドを囲む形で植えられている桜の木の葉で、日光を遮っているようだった。

 気持ち良さそうだけど・・・・そこで寝なくても。

 俺は黙って彼女を見下ろしていた。すると、いきなり横から幸田が言った。

「ほーら、航、とってこーい!」

「え?」

 聞き返すのと同時にヤツの手から黄色い何かが飛ぶ。

 それはテニスボールで、幸田はわざわざコートの周囲にあるフェンスの上を目掛けて放り投げたらしい。ボールはそのままあぜ道に落ち、当然のように転がって斜面を走って行った。

「ちょ・・・おい!」

 俺が振り返ると、そこにはまだにやけた顔の幸田。ラケットを肩にあてて悪そうな顔で言った。

「ほら、あの子と話すチャンスだろ?ボールとってこいよ、まだ俺達の順番こねーしさ」


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