【完結】遺族の強い希望により
幼くて未熟で、けれど真剣で、そしてだからこその素直な思考だった。
愚かだとは思わなかった。


親や友人に気付かれないようにと苦労して手に入れた避妊具は、半分袋が開いただけで用無しになった。
何故こんなものが存在するのか、そっちの方がむしろ不思議に思えた。

愛する人との愛の証明の行為を穢すもののようにすら感じて、男はそれを放り投げた。


「――欲しい」


君が。君の子が。君との未来が。

男が口には出さなかった言葉の先までを、女はしっかりと受け止めて微笑みを返す。
自分も同じだと、その目が語っていた。
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