【完結】遺族の強い希望により
結局、隆司は妻には真実を告げずにジェシカとの再会を果たしたようだ。

ジェシカへの手紙の返信には明らかに隆司が彼女の娘を自分の子だと認識している感情は現れていたが、彼は一言もそれを確認する言葉を綴っていない。

ただ今現在自分には妻がいること、夫婦の間でどういう流れでジェシカのことが話題に上り彼がオーストラリア訪問を決めたのかという経緯が報告されているだけだ。


『話に聞いていた真夏のクリスマスとやらを一度味わってみたい。今年そちらを訪れてみたいのだが、迎えてくれるだろうか』

そんなような文面だった。


にも関わらず、順を追って2人の歴史を追いかけて来たみのりには、手紙に綴られた内容だけで隆司の葛藤や妻との食卓の光景が見えるようだった。
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