【完結】遺族の強い希望により
出会った頃にはたどたどしかった日本語は、大分板に付いていた。

母国語の音声学上の違いなのかところどころ発音がおかしい単語もあった――事実彼女は、男の名も正確に発音することが出来ない――が、時折会話に知らない言葉が混じっても意思の疎通を欠くほどではない。

むしろ今では、会話の流れや互いの表情から言外の気持ちを汲み取れる程度に2人の距離は縮んでいた。

少なくとも男の方はそう思っていた。
そしてだからこそ、強気に出ることが出来た。


「ああ、大事だよ。家族よりも君の方が何倍も。分かってくれ、特別な日だからこそ一緒にいたい」

「リュウ……」


駄目だよ、無理だよと金色の髪を揺らす少女が、本当はそれを望んでいるのだと信じられたから。
< 23 / 450 >

この作品をシェア

pagetop