【完結】遺族の強い希望により
3世とは思えないほどに、その少女には日本人の血が濃く滲んでいた。
艶のある真っ黒な髪は黒髪を見慣れている美和子でも息を呑むほどに美しい。


「孫です。今は薬で眠っています」

高嶋隆司の遺体が眠っているのと同じ病院に、その娘は入院していた。
会わせたい人がいるとジェシカに連れてこられたのがその病室だった。


孫と言われて美和子がぴんと来る年恰好ではなかった。
娘の玲奈とほとんど変わらぬ歳に見えたからだ。
事実その娘が玲奈と1つしか違わないことは、後になって聞いた。


「薬……麻酔か何か?」

「いいえ、鎮静剤と睡眠薬を。酷く興奮していて、暴れたものですから」

「あの人が――夫が亡くなったためにですか」


引き合わされるのは隆司の――否、ジェシカの娘だろうと思っていた美和子は困惑していた。
しかも相手は眠っている。
話をさせるためにここへ呼ばれたのではないことは確かだった。
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