【完結】遺族の強い希望により
エラ、というのが、ジェシカの娘の名前だ。
結婚間際に母親から引き合わされた自分と同じ黒髪を持つ隆司のことを、すぐに実の父親だと認識した。

だがエラは、ジェシカの曖昧な言動から、人には言えないような事情があるのだと薄々察していた。
隆司が日本に家庭を持っていることを聞かされていたエラは、そこに自分なりの辻褄が合う解釈をこじつけた。


両親――隆司とジェシカは、若い頃に恋に落ちて自分を身ごもった。
だが国境の壁か年齢の問題か、何らかの理由で離れ離れになるしかなかった。

ジェシカはそのまま、国で1人で自分を産む。
2人は離れ離れの間もずっと愛し合っていた。
何故なら、もしそうでなければ、ジェシカが自分を産むはずがないのだから。
< 309 / 450 >

この作品をシェア

pagetop