【完結】遺族の強い希望により
「自分の浅はかな考えと行動が祖父を殺してしまったと、クロエは自分を責めています。酷く取り乱して、今日1日の間に何度も自殺を図りました」

額を床に付けたまま喋るジェシカを、美和子は遮った。

「まだ言わないつもりなんですか? 彼とは血の繋がりなどないのだと」


クロエの精神状態は分かった。
確かに今刺激すれば危険はあるだろう。
だがせめてエラには、と美和子は思った。
むしろ今時点でエラに伝えられていないことの方が不思議だった。


ジェシカは土下座の姿勢のまま、頭だけをゆらりと持ち上げた。
一瞬その顔が、朽ちて眼球の落ちたミイラか何かに見えた。
それくらいの深い闇を湛えた焦点の合わない暗い目で、ジェシカは言った。

「言えるのですか……?」


聞かれた意味が分からなかった。
言えない理由とは一体なんだというのか。
つまりジェシカが考えているのは、自分の保身だけではないか。
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