【完結】遺族の強い希望により
言われてみればその通りだ、と玲奈は思った。

父は騙されていたわけでもなく、血の繋がりなどないことを知りながら最後まで向こうの一家を家族と称した。

だが、本当にそう思っていたのならば、向こうの家族へ宛てた手紙があってもおかしくないのだ。
どう最悪の事態を予想したところで、可能性で言うならばオーストラリアにいる短い期間よりも日本にいる間の方が命を落とす率は高かっただろうに。

そんな手紙など存在しないことが、何よりの証明だ。
何度も綴られた『愛している』の言葉よりも誤魔化しのきかない、父の深層心理の表れだ。


「……可哀相な人たち、だったのかな……」

憎むべき人たちだと思っていた。
事実憎んだ。
だが本当にそうなのか。
父は――常に正しい人であり続けた父は、彼女たちのこともまた、愛していたようだった。
少なくとも言葉で『家族』と呼べるくらいには。
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