【完結】遺族の強い希望により
「そこまで話がまとまってから来るべきだったな……情けない」

父の冷たい声に、背筋が震えた。

「お前の親は何と言ってるんだ」

身が竦んだ。
亮はみのりが隠していた事実を全て知ったその日の内に、ここを訪れたのだ。
彼の両親に話をする時間などなかった。

答えられず、握りしめた拳を震わせる亮の様子に、父は声にならない息を吐き出した。
溜め息でもない、舌打ちでもない、抑制のきかなくなった生の感情がそのまま溢れ出たような空気の塊だった。


「娘は親の前で話したぞ。貴様の覚悟はその程度なのか。筋が通らんだろう」

「お父さ――……」

「帰れ。顔も見たくない」


父は誰の目も見ようとしなかった。
隠すように顔を背け、足音を響かせながら1人リビングを出る。

沈黙が数秒、その後壊れんばかりの勢いで扉が閉められた音がした。
寝室に籠ったのだろうとすぐに分かった。
もう父には、話をするつもりはないのだ。
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