【完結】遺族の強い希望により
「そこに直れ」

みのりと亮、それから2人の両親が集った重苦しくも厳かな空気の中、最初に口を開いたのは亮の父親だった。
思い返せば時代劇のようなセリフだが、その時は誰も笑わなかった。

背丈はそう高くない。
亮の父親として想定される年齢層の平均よりも若干頭が薄いように思えた。
みのりが抱く昭和の頑固親父のイメージをそのまま絵に描いたような人だった。


「佐伯さん、この度は愚息が本当に申し訳なかった。この通りです」

彼はそう言うと隣に正座をさせた亮の頭を抑え、畳に叩きつけた。
続いて自らも頭を低くする。


亮の母親は黙ってそれに続いた。
こちらは無口な女で、みのりが1人で亮の家を尋ねた日もほとんど口を開いていない。
ただ醸す空気と視線は優しくて、怖いとは感じない。
悲しげな雰囲気を纏っているのは、やはり息子のしたことに後ろめたさがあるのかもしれなかった。
< 427 / 450 >

この作品をシェア

pagetop