【完結】遺族の強い希望により
もう一度亮が隣に正座をするのを待って、彼の父親は言った。

「申し訳ない、この程度のことしか出来ない。佐伯さんは優しい方だ、愚息に対して手加減をされた。ですから代わりに私が。どうかこの一発に免じて、愚息の尻拭いを私たちにさせていただけないか」


手加減、と言われ、みのりは目を剥いた。
どう考えても父は本気で亮を殴った。
あの翌日には彼の顎周りはぱんぱんに腫れており、やはり骨も少しずれていたのか、喋るために口を開くのも痛そうだった。

だが亮の顔を見れば、たった今殴られたばかりの場所が既に黒く変色している。
父が殴った時には、腫れも内出血も後から出たように思う。
衝撃の違いがその差なのかは分からなかったが、今亮の父親が息子に入れた一発には一切の手加減が無かったことだけは窺い知れた。
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