【完結】遺族の強い希望により
その日が恐らくは、最後の2人の逢瀬になる。
だからこそ長い夜を共に過ごし、そこで彼女を――という思惑も男の中には少なからずあった。

手の届かない存在と思っていた少女と気持ちが通じ合った、二次性徴を終えたばかりの男としてはそれも当然の欲求だったと言えるかもしれない。


けれど男は、彼女の母国の習わしと、彼女と彼女の家族を尊重して納得した――或いはその振りをした。
必死で自分に言い聞かせ、別れの時への心の準備を、漸く始めた。


もう二度と会えなくなるだろう恋人を、自分の欲や最後だからという理由で抱いてしまえば、待っているのは後悔だけかもしれない。
後にそれは彼女に傷となって残るかもしれない。
綺麗な思い出のまま残しておく方が、互いにとってきっと幸せなことだ。
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