【完結】bitter step!
失ったもの、壊れかけた何か、負った傷、流した涙、苦しんだ時間――。
それら全部と秤にかけても、その【楽】を取るために、騙されたのだと認めて嘘を笑って許すことは出来た。

否、そういうフリなら、ボクには出来たはずだった。
そしてフリをしている内に、いずれは本当に忘れて、許してしまえる日が来るんだろう。


ただそれが、ひどく……、そうすることが全員にとって得策だと分かっていても、それでもなお、それはひどく、汚い行為に思えたんだ。


汚い、卑怯な、大嫌いな自分。
ボクを騙した、或いはたった今騙そうとしている美紗。
踊らされて傷を負ってもなお、道化を演じ続ける純平。


全部が汚くて、ひどく滑稽だった。
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