空のギター
 どんな明日でも生きてやろうと思った。沙雪の分まで、しっかりと地面を踏み締めて歩いていこうと誓った。大サビ部分を歌いながら、心の中で呟く。大好きな、大切な姉に向けて。

 ねぇ、お姉ちゃん。私、歌ってるよ。今、一人でこの場所に立ってるよ。お姉ちゃんが居なくなった悲しみは、きっとなかなか消えてくれないと思うんだ。だから、ずっと覚えておくね。そうすればいつか、お姉ちゃんのことを“会いたい”じゃなくて“懐かしい”って思える日が来るような気がするんだ。

 誰かが死ぬって、忘れられるばかりじゃないのかもね。誰かが忘れても、私はずっと覚えてるよ。お姉ちゃんのこと、ずっとずっと歌っていくから。

 ──演奏を終える。その瞬間、頭に閃光が走った。



「……“あの曲”の歌詞、完成するかも……!!」



 いつ何どきアイディアが浮かんでも良いようにと常にポケットに忍ばせている携帯を手に取り、雪那は頭に浮かんだイメージを文字化していく。肩にかかっている相棒は、雪那のその仕草を覗き込むようにおぶさっている。画面に並んだ文字を眺める雪那が思わず歓喜の声を洩らした時。トタトタという足音が、彼女の目の前で止まった。
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