空のギター
 最後に全員の目が紘に向く。紘は「俺のは難しいよー?何たってクラシックだからね!」と意地悪く笑った。頼星が“勿体ぶらずに早く言え”というような目を向けたので、紘は「はいはい!」と言って話し始めた。



「ええっとねー……タイトルもメロディも凄い綺麗な曲だね。ちょっと怖い所もあるけど、俺は大好き!難しい曲だから、覚えるまでに苦労したんだけどね。」



 現代の子供でクラシックを聴く人は少ない。ピアノやバレエを習っていたり、両親などから影響を受けたりしなければまず聴かないだろう。雪那達四人も大いに悩んだ。



「……降参?教えてあげても良いよー?」

「その言い方ムカつくんだけど。」

「頼星落ち着けよ……紘、答え教えてくれる?」



 キレそうになった頼星をなだめて風巳が言う。紘が満足そうな顔をして口を開けた、その時だった。



「ちょっと待って!俺分かったかも!!」



 雪那が声を上げ、全員がそちらを振り向く。雪那が自信なさげに曲名を呟くと、紘は笑って「正解!!」と言った。



「……姉が、よく弾いてたから……」



 何処か寂しそうに笑った雪那。その理由を光夜・風巳・紘は、まだ知らない。
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