空のギター
 キラキラと輝く半透明のボトルが雪那の笑顔を映す。うっすらとした水色を、彼はとても気に入ったらしい。「匂い嗅いでみれば?」と頼星に言われ、雪那は大きく頷く。キャップを取って、空気中にシュッと一吹きした。

 ──香りを吸い込んだ瞬間、雪解け水を浴びた瑞々しい植物の匂い。次いで、春の暖かさを感じる薄いフローラルの香気が漂う。“春の雪”というその名にふさわしい一品だった。



「……雪那に合ってるかもな。」

「うんうん!もしかして織春ちゃん、雪那をイメージして作ったのかもよー?」

「織春ちゃん、雪那にベタ惚れだもんなぁ。真実を知ったら織春ちゃんがどう言うか……」

「風巳、それは雪那も気にしてるんだから黙っといてやれよ。」



 口を開いた順に、光夜・紘・風巳・頼星。苦笑した雪那は頼星に「ありがとう」と言い、四人に向き直る。その瞳には、強い決意が宿っていた。



「……次の新曲が出たらさ、ファンのみんなにちゃんと言おうと思って。社長と硝子さんに相談したら、『マスコミを通してでも良いし、CDケースにメッセージを入れるのも良いんじゃないか』って言ってくれたんだ。」
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