私の王様


――――――――――
――――――――
―――――



これは、夢だ。


私の一番大切なものが、彼だけだった頃の、愚かな、夢。




「いずみくんいずみくん!やくそくだよ?」

「わかってるよ、藤子(トウコ)」

「ほんとう?おとなになったら、ほんとうにいずみくんのおよめさんにしてくれる?」

「もちろん。ほら、約束のしるし」


小さい私の指に、大きな手が伸びて、キラキラと光る指輪をはめる。


「‥‥おっきい‥」


本物であろう綺麗な指輪は、私の小さすぎる指にはあまりにぶかぶかだった。


「大人になる頃には、ぴったりになってるよ。だから、ほら」


泣きそうになる私から指輪を取ると、細い鎖にそれを通し、私の首にかけてくれる。


「すごぉい!」

「それでいつも持っていられるだろ?なくしちゃだめだよ?」

「うん、ずっとずっともってる!」


嬉しくてはしゃぐ私に向けられる彼のやさしい笑顔が、私はずっと、ずっと好きだった。




――――――――――
――――――――
――――――
< 2 / 16 >

この作品をシェア

pagetop