モテないオトコ
 シャワーを浴びる。
 俺の体から放っていた、酸っぱい匂いが体の中から消えていく。

「持内君ごめんね……」

 湯船に浸かったまま、橘さんが俺に謝る……

「構いませんよ……」

「あの……
 裕也って誰ですか……?」

「元婚約者……」

 橘さんは、表情を変えず言った。

 やっぱりか……
 橘さんは、やっぱりまだ、裕也って人の事が好きなのかな?

「こうやって一緒のお風呂にはいるのって照れるね」

 俺は話を変えた。

「私は平気だよー
 なんならエッチな事でもしてみる?」

「まだ、お酒抜けてないんですか?」

「私、もう酔ってません」

「だったら、そんな事言わないでください。」

「……私は、本気です」

 本気……なの?
 だったら、ドサクサに紛れて……

「俺、橘さんの事好きです。
 はじめて会った時から、ずっと……
 だから、いい加減な気持ちでそういうことしたくないんです」

「私もさ……
 いい加減な気持ちでこういうこといいませにょ」

「だったら……」

 だったら、そういう冗談言わないでください。
 俺は、そう言いたかった。
 だけど、それを塞いだのは橘さんだった。
 橘さんの唇と俺の唇が結婚をした。

「っん……」

 頭の中が真っ白になる。
 キスは、初めてじゃなかった。
 だけど、初めてのキスの様に胸の鼓動が速くなる。

 唇と唇が離れる。
 そして、橘さんは言った。

「私も、貴方のことが好きです」
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