腹黒王子の取扱説明書
「ジュピターの無線技術には期待してますよ。社長によろしくお伝え下さい」

もう二度と来るな!

心の中で毒づきながらも、笑顔を貼り付ける。

暗に話は終わりだと言っているのに、井澤は出て行かない。

麗奈を数秒凝視し、彼女を指差した。

「あっ、ナナちゃんみーつけた」

井澤の目がキラリと光り、彼は口角を上げる。

麗奈はそんな彼の視線から逃れるように、俺の背後に隠れて俺のスーツのジャケットをぎゅっと掴んだ。

俺は舌打ちしたいのを我慢して、彼に告げる。

「僕の婚約者に何か?」

鋭い眼光で井澤を睨み付けると、彼はあっさり引いて部屋を出て行った。

だが、あまりにも諦めが良すぎる。

井澤のあの目が気になった。

このままアメリカ出張に行って大丈夫か?

不安が俺の心を過った。
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