腹黒王子の取扱説明書
「ナナちゃんもロックでいい?」

私が不機嫌なのを面白そうに見ながら、専務は氷を入れたグラスにリシャールを注ぐと私に手渡す。

ああ、もう飲んで全部忘れてやる!

万が一首になったら、叔母さんに給料倍にしてもらおう。

私はやけになってグラスを一気に飲み干すと、専務にグラスを差し出した。

「おかわり!」

酒は飲んでも飲まれるなって言うのに、私はなんて馬鹿な事しちゃったんだろう。

数十分後には私はすっかり酔いつぶれ、一人では歩けなくなっていた。

「…眠い。早くベッドで寝たい」

「その願い、叶えてあげるよ」

専務に抱き抱えられ、抗うことも出来ないままタクシーに乗せられる。

その後の記憶が全くない。

目覚めた時、私は知らないベッドの上にいた。
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