腹黒王子の取扱説明書
「い……や……」

私は驚愕に震えながら頭を振る。

「あの若造の専務には可愛がってもらってるんだろう?」

顔をニヤニヤさせながら井澤が私に顔を近づける。

彼の息がかかると私の全身にザワワッと鳥肌が立った。

「俺とちょっと遊ぶくらい良いだろう?」

「いや……」

「お前が傷物になったら、あの若造悔しがるかな?それともお前を捨てるかな?」

井澤の残忍な言葉に目の前が真っ暗になる。

俊はまだニューヨークだし、杏子もすぐにメモに気づくとは限らない。

絶望的な状況。

でも、やっぱり頭に浮かぶのは彼の顔で、彼の名を呼ばずにはいられない。

「俊ー」

私は目をつぶって声を限りに叫んだ。
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