腹黒王子の取扱説明書
「良くできました」

クスッと麗奈の目を見て笑って、彼女に口付ける。

柔らかくて甘いその唇。

素面なのに酔いそうになる。

止められない。ここが会社というのを忘れそうだ。

帰国したばっかりで身体の感覚がおかしいのかもしれない。

麗奈の気持ちもはっきりしたし、このまま抱いてしまいたい。

キスを続けながらそんな事を考えていると、突然ドアをノックする音がした。

麗奈がその音に慌てて俺から離れる。

俺の返事を待たずにドアが開いた。

そんな事をする相手はうちの会社に二人しかいない。

須崎と……社長である親父。

邪魔者め。

良いところで邪魔されて、俺としては面白くない。

「せっかちな人ですね。返事を待ってから入ったらどうです?」

冷淡に言って親父を見据える。
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