腹黒王子の取扱説明書
「これくらいなら縫う必要はなさそうだな。消毒だけしとく」

「いつからうちの産業医に?」

「今日は代理だ。先輩が学会で発表があるらしくてな。俺は今、桜花医大にいる」

「将来は教授か?実家の病院は?」

「俺は三男だからな。俺は俺の道を行く」

亮がニッと笑いながら、体温計を取り出して彼女の耳に当てる。

ピピっと体温計が鳴って、彼は数値を読み上げた。

「三十九度五分。高いな。咳は?」

「今朝はしてなかった。今日の明け方から熱っぽかった」

「今日の明け方から…か。女の子抱き上げて派手な登場したと思ったら、やっぱりそういう関係なのか?」

面白そうに目を輝かせながら、亮が中山麗奈と俺とを交互に見る。

「お前が期待するような関係じゃないよ。風邪か?」

「多分風邪だろうが、2ー3日しても熱が下がらなければ病院で診てもらえ」
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