記憶堂書店
プロローグ


人には必ず、ターニングポイントがある。

そう言ってしまえば聞こえはいいが、要は人生で選択を迫られた分かれ道だ。

そして、選んだ後に人はこう思う。

あの時、もう一つの道を選んでいたらどうなっていただろうと。

幸せになっていたのだろうか、不幸になっていたのだろうか、貧乏になったのだろうか、金持ちになったのだろうか、生きていたのだろうか、

死んでいたのだろうか――……


大体は考えるだけで終わるのだが、どうしても‘その時’に戻り、もう一つの人生を見たいと強く願う人が存在する。
それは深く心に想い、忘れられず、囚われる。
選ばなかったもう一つの選択肢に想いを馳せ、想像を膨らませる。
それはその人の心に住み着き、離れなくなるのだ。
そして何故かそういう人は大抵、ここへふらっとやってくるのだ。


この、記憶堂に――



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