記憶堂書店

修也が図書室に来る理由はさぼりだけではなかったのかもしれない。加賀先生に母親の話を聞きに来ていたのだろう。

「だから、大目に見てくださいね」

龍臣が修也が来る理由に気が付いたのを加賀先生は優しく微笑んでそう言った。

帰り道。

龍臣が無言で歩いていると、修也は気まずそうに顔を覗き込んできた。

「さぼってること、怒ってるの?」
「いや? 別に怒ってないよ」
「そう? なんかムスッとしてるからさ」

少しホッとした様子を見せながら、痛いところを突いてくる。
別にむすっとしていたわけではないが、修也にはそう見えたのだろう。しかし、あんな話を聞いてニコニコとはしていられない。
龍臣は「それは……」と口ごもってから、修也を見た。
これは本人に聞くのが一番だろう。

「加賀先生に母親の事、聞きに行ってたんだろ?」

龍臣の言葉に一瞬目を丸くしたが、すぐに照れ臭そうに微笑んだ。


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