記憶堂書店


週末、龍臣は修也の家にやってきた。
修也の家は古い日本家屋のような作りで、一階建て。龍臣は昔から何度も来ていた場所でもある。
突然訪問したが修也の祖母は笑顔で迎えてくれた。
しかし修也は祖父と買い物に出ているとかで家にはいなかったが、待っていろと言う言葉に素直に甘えることにした。

「久しぶりねぇ、龍臣君。少し待っててね、修也ももうすぐ帰ってくるから」
「ありがとうございます」

修也の祖母、夏代がお茶とお菓子を出してくれ、それを摘まむ。

「最近、あの子が記憶堂に行っていなかったんですって? 修也のことで、心配かけてごめんなさいね」
「いえ、そもそもは僕が修也を動揺させてしまったんです」
「聞いたわ。全く、それくらいで動揺するなんてあの子もまだまだね」

ふふっと夏代が笑う。

「夏代さん、修也の母親についてなんですけど……」
「あの人から話を聞いたんでしょう? 私はそれ以上、何も知らないわ」

そう言って寂しげに微笑む。

「あのね、修也の母親についてはいつか私達から話すからまだあの子には言わないでもらえるかしら?」
「それはもちろん。僕が口出すことではないですし。今日は修也の様子を見に来ただけですから」
「ごめんなさいね。いつかは言わなくてはと思っていたんだけど、なかなか踏ん切りがつかなくて。折を見て話すつもりだから」

それに龍臣は頷く。
今日は修也がどうしているか様子見と、先日のことを謝りに来ただけでそれ以上の話をするつもりはなかった。
それに、その話は龍臣がしていいことではないとわきまえている。

すると、玄関がガラッと勢いよく開いた。

「ただいまー」

修也と源助さんが帰ってきたようだ。
源助さんは龍臣を見ると、「よう」と片手を上げた。そして修也は「どうしたの、龍臣君」とキョトンとしている。

「どうしたのじゃないのよ! あんたが記憶堂に顔を見せないから龍臣君が心配して来てくれたんじゃないの」

夏代さんがそう言うと、修也はパッとカレンダーを見た。

「そっか! もう一週間は行っていなかったんだね」
「まぁな。さすがに少し心配した」

そう言うと、夏代さんは「とりあえず、ここじゃぁなんだからお菓子でも持って修也の部屋でゆっくり話しなさいよ」とお菓子を持たせた。
修也の部屋は奥にある。
二人で修也の部屋へ行き、話すことにした。



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