伝え忘れた想い。


「驚いた。まだそれ使ってる奴俺以外にもいたんだな」



「え、田中も?」



そう言うと田中もリュックの前ポケットからあたしが持っている同じタイプのグリーンの色をしたiPodを取り出した。



「へ〜、田中はグリーンにしたんだ。ちょっと貸して」




田中から渡されたiPodをまじまじと見つめる。



「グリーン可愛いね。

実はあたしが好きな俳優が主演した映画でその人がこのiPodのグリーン持ってるシーンがあってすごいグリーンが欲しくなった時期があったんだよね」



別にその人が持ってるわけじゃないのに、映画を見た瞬間はすごいオレンジを選んだことを後悔した。



「俺、緑が好きだから買う時は緑1択!

……でも、庄司が緑欲しいならオレンジと交換してもいいよ?」



「え?」



いきなりの田中の提案に声が漏れる。



「いや、だってお互いこれ買って大分時間経ってるし色飽きないか?

こう庄司のオレンジ見てたらオレンジもいいなぁってちょっと思ってさ。

べ、べ、別にお前と交換したいからって訳じゃないからな!」



田中の顔が赤く染まる。



私は田中のグリーンのiPodを見つめながら自分のオレンジのiPodを視界に入れる。



「なぁ、交換するか?」




もう1度田中が誘う。


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