妖しがりて寄りてみるに
終業式
高校生になって初めての夏休み…前の、終業式。


教室の中は、ざわめき立っている。

私も胸のワクワクを抑え切れずに、自然に笑顔になっちゃう。



「なに、ニヤニヤしてんの?」

不意を付かれてドキッとした。

でも、ドキッとしたのはそれだけじゃない。

声の主は、一週間から付き合い始めた、私のハツカレ。


「ニヤニヤしてないよ〜」

でもきっと顔は笑ってるはず。


「ヒヨ、夏休みいっぱい遊ぼうな」

「うん!」


私は、嬉しくなって思いきり返事をした。


竹田日和(ひより)って言うのが、私の名前。
平凡な名前だけど、彼にヒヨって呼んでもらうと、くすぐったくて特別な気がする。

「篤(あつし)くんと花火も行きたいし、プールも行きたいし!」

私は、長い間思い描いていた夏のデートを想像して、すごくすごく嬉しくなった。


…キスとかも、するのかな。


チラッと篤くんを見ると、にっこり笑ってて、顔が熱くなった。




「なに想像してんの?
 ヒヨや〜らし〜♪」


「そんなんじゃないもん!」


ますます顔が熱くなる。


篤くんはポンポンと私の頭をたたいて、自分の席に戻って行った。


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