ハルノウタ



大きな広場で、フィビアン・リュヌ・プランタンは親友フレデリック・ミシェル・リシャールと共に昼食を楽しんでいた。



厳密に言えば、現在時刻は4時過ぎだから夕食に近いのかもしれないが。



「まさかね、お前が結婚するなんて。一体どんなかぜのふきまわしだ?」



フレデリックが言った。



「なんでもないよ。国王に言われたのだから引き受けただけ。」


「嫌、俺は知ってるぞ。今までお偉い貴族の嬢ちゃんたちの縁談は全て断っていたじゃないか。」


「なんだ、知っていたのか。恥ずかしいな。」



「俺の周りじゃ有名な話だよ。どんな美人だって断るってね。だから密かに噂されていたぞ、お前は実は“ゲイ”なんじゃないかってね。」



フィビアンは危うく飲んでいた水を吹き出してしまうところだった。



自分が知らない間にそんな噂を建てられていたとは。



世の中何が起こるかわからないものだとフィビアンは思った。



ゲイではない。断言しよう。



フレデリックには言ったことがないが女の子をちゃんと好きなったことだってある。




「ハハハ。そんな噂が立ってしまっていたのか。容易く縁談を断るのも考えものだね。」



フィビアンは陽気に笑って見せた。



「笑い事ではないぞ。俺はいつお前の餌食になるのかの怯えていたのだから。この噂が国王に知れたら一大事になるところだった。」



フレデリックは真剣な顔つきでフィビアンの方をじっと見つめた。



「それは、困ったな。」


「で、なんで結婚なんて決めたんだよ。」


「なんでかって?なんでだろうな。」



フィビアンは曖昧にぼかしながらパクパクとローストビーフを口に運んでいった。



これまで何人もの娘から縁談を持ち掛けられたがどの娘も二人で歩む将来がイマイチ掴めなかった。



どんなに顔が良くたって、歌が上手くたってフィビアンを魅了するものではなかったのだ。



そんな時、隣国の王女様との話がやってきたのだ。



なんでも、ハイテクな資源が隣国で発見されたとかなんとか。



同盟を組む折、お互いの子供同士を結婚させようなどと言う話になったらしい。



流石にそんな話を断るわけにはいかなかった。



国未来が掛かっているところで己の将来がなどとは言っていられない。



後は自分が手を出さずして事は淡々と決まっていったのだ。



知らない間に婚約の日取りまで決まっていたのだから驚きだ。



やはり、人生何が起こるかわからないものだなとフィビアンは思った。



「何、ニヤニヤしているんだ?そうか、さてはすごいべっぴんさんなんだな。」


「まだ会ったこともないよ。ただ、いつものように断れなかっただけだよ。」


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