食人姫
祭りの後
啜り泣きながら、俺への恨み、谷への恨みを口にする由奈を引っ張って家に戻った。


あの後、社務所の小屋で由奈が呟いた言葉に、俺の心が動かされたから。


そうしてやろうと思いながらも、自分一人では実行しようと思えなかった事。


「あった。これだ」


倉庫の中から、冬に使い切れなくて余っていた灯油が入ったポリタンクを持って外に出た。


「……それで何するの?」


冷たく、刺すような視線を俺に向ける由奈。


やる事なんて決まってる。


「今、集会所に谷の人間が全員集まってる。多分そこで、切り分けられた麻里絵の肉を皆で食ってるんじゃないのか?」


「え……麻里絵の肉って何」


何も知らないと言うのは罪だ。


教えてもらえず、知ろうともせずに、谷の風習だからと口にした肉は、先日まで一緒にいた幼馴染だ。


直人や源太達も、その事を知らされずに麻里絵の肉を食べているかと思うと、それに対しても怒りがこみ上げてくる。


これが、お前らが望んだ儀式の結末かよ。


幼馴染を食って生きる事を、お前らは望んでたのかよと。


「化け物から身を守る為に、巫女の肉を食うのが儀式の正体だ。だから、麻里絵は今、谷の人間皆に食われてるんだよ」
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