食人姫
その後、下ろされた勝浩の上半身は神社の方に運ばれた。


大人が言うには、化け物に食われた人間は通常の葬儀ではなく、特別な方法で埋葬されるようで。


それを知るのは、もう少し歳を重ねてから……との事で、詳しくは教えてもらえなかった。


結局俺達に出来る事など何もないと宣告されたようで……自分の無力さを思い知らされただけだった。


誰もいなくなった鳥居の前。


勝浩の血が土に吸われて、そこが黒っぽくなっている。


空を見上げると、西の方が随分暗くなって来ている。


まるで、暗闇と共に化け物がやって来ているようで不気味だ。


「……とにかく戻ろう。化け物が勝浩を食ったなら、俺達もいつ襲われてもおかしくないから」


未来の家はここから近い所にあるから、多分大丈夫だろう。


問題は哲也だ。


登校中のバス、電車、いつも一緒にいたはずの、弟のような存在の勝浩があんな姿になったんだ、ショックを受けないはずがない。


俺にとっても弟みたいな存在だったけど……離れていた時間のせいか、哲也が受けたほどの大きな悲しみにはならなかった。


それが悲しくて、俺の目から涙がこぼれた。
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