Arabian Princess 〜海賊に連れ去られた王女


「あ、ありがとう、ございます…。」


サフィは腕の中で気を失っている様子のジアを力なく見つめ、海賊らしき男たちが消えて行った方向を見つめる彼にそう言葉を紡ぐ。


「あのままだったら絶対攫われてました…。」


「それはちょっと違うかな。」


「え?」


ブロンドの彼は未だこちらに背を向けながらそう言った。


「僕も君を攫う予定だから。」


もちろん彼が発したそんな言葉にも驚いたが、それよりもその言葉とともに振り返った彼の容姿に驚いた。


ーー綺麗…。


左右対称で、緻密に計算しつくされたような完璧な容姿。


まるで作り物であるかのようなくっきりとしたターコイズブルーの瞳に、鼻筋の通った高い鼻。
薄く形の良い唇は、血色が良く淡い薔薇色。

いつか見た、西の国の絵画に出てくる天使のようだ。


そんな美しい彼に見惚れていたサフィは、突如お腹のあたりに鋭い痛みを感じ、


「っ!」


そのまま意識を手放した。



薄れゆく意識の中、まっすぐこちらを見る、まるでメシアのような力強い瞳が視界に映った。

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