向日葵の事情

「で、何の用?」

「簡単なことだけど、俺とお前は同じ大事な人を失ったわけ。
だから仲良くしましょうってこと」

「……傷の舐め合い?」

「ははっ、そうだね。でも辛くなったら連絡して欲しいから、これアドレス。
汚いおじさんとヤるより俺に頼れよ」

そう言って彼は去っていった。


…超ストレート、超直球な奴。

彰なら『汚いおじさん』とか『ヤる』とか言わないし

本当にデリカシーのない人。




翌日も翌々日も繁華街へ出た。

『汚いおじさん』とヤっても
時雨に連絡はしなかった。


月日が経って梅雨の時期。

いつものように繁華街を歩く。


「なぁ、ねーちゃん、いい事しよーよ」

今日もその誘いを受け入れるだけ。


なのに。
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